ま、いいじゃないですか。お母さんやお父さんのように微笑めば。

　皆さんにも経験があると思うのですが、幼い頃、お母さんやお父さんに「ねー、サッカーシューズ買ってよお」と、おねだりしても、お母さんが「正選手になったらね。それまで一生懸命練習なきゃ」と言われ、

　「だって、川端君や三島君は分かるけど、芥川君だって新しいサッカーシューズ履いてるんだよ」と、なんとか皆の憧れのサッカーシューズを買ってもらおうと駄々をこねた、それに似た記憶がおありだと思います。

　ようやく買ってもらったサッカーシューズを目の前にして、「やったーッ！！」と、喜びを全身で表すタイプの少年と、内心は嬉しいのに無関心を装い、パッケージも開けずにポンとそこらへんに置いておくタイプの少年がいます。

　わたしは後者だったかな？

　でも、ひとりになって、あせる気持ちを抑えてパッケージを開き、憧れのサッカーシューズを手にしてそれを眺めると、自然に頬がゆるみ、ついニンマリしてしまう、そんなタイプの芥川賞受賞会見でしたね。

　こっそりその姿を見て微笑むのがお母さんやお父さんです。

　記者会見での態度に賛否両論あるようですが、ま、いいじゃないですか。今回の受賞者の田中さんにはこれからもずっとあの態度を貫いてもらいたいものです。

　そもそも記者会見場に出たこと事態が世間のしがらみに負けているのですから。世の中には発表もしない作品をコツコツと書き続けている孤高の作家がいると思いますよ。